風と草
俗世でみんな生きている
2022-02-21
こんにちは、副住職の源さんです。
今回の掛軸紹介はこちら。
明治時代の仏教哲学者であり、東洋大学を創立した教育者としても知られる井上円了の書です。
「厭世猶交俗、求仙未入山、人生悲喜境、自有我禅関」
と書いてあります。
「世を厭いてなお俗と交わり、仙を求めていまだ山に入らず、人生悲喜の境、おのずから我が禅関あり。」
と読んでおきましょう。
「世をいやなものと思っても、それでも俗世と交わり、静かで清らかな場所を求めても、山にこもることはしない。
人生の悲しみと喜びが交差した境遇にこそ、私にとっての禅の入り口があるのだから。」
といった意味でしょう。
俗世を離れて静かに暮らしたいという気持ちは、喧しい現代に生きる多くの方が共感するところですよね。
しかし、喜怒哀楽に振り回され、人生の酸いも甘いも嚙み締めたところからしか見えない風景があるはずです。
井上円了はそれを「禅の入り口」、つまり悟りへ至る道の入り口と表現しました。
現代に生きる禅僧の背中を押してくれる漢詩です。
不寛容が世界を覆い、コロナ禍がそれに拍車をかけているように思います。
そんな世界に生きているからこそ、自分のこと、人のこと、社会のこと、様々なことに改めて気が付いたという方は多いのではないでしょうか。
俗世でみんな生きている。
とあるメロディに合わせて、こんなフレーズが頭をよぎりました。
それでは、源さんでした。